最近は、新型コロナの関係でなかなか移動運用に行けませんが、移動運用に行った際に目的とする場所と通信できるかどうかあらかじめ確認できると助かることがあります。そのため、今回はMATLAB でシミュレーションしてみることとしました。(MATLAB R2020bを使用)
MATLAB は各種の科学技術のシミュレーションができるツールですが、今回の電波伝搬シミュレーションは、MATLAB とアンテナ関連のシミュレーションを行うことができる Antenna Toolbox を使用しました。
Antenna Toolbox はアマチュア無線用ではなく、レーダの設計や衛星通信、さらには5G携帯電話のサービスエリア計算などを想定されて作られており、それらへの応用例が多いです。しかし、アマチュア無線でもそのまま使えますので、今回はアマチュア無線の移動通信用シミュレータとして使ってみました。
今回の例では、これまでに何回か移動運用を行っている滝知山展望台から西方向へ430MHz FMで通信を行うことを想定します。これまでは、焼津市より西との交信が難しいことが多かったので、浜松市と通信ができるか確認してみます。
まず、送信ポイントを滝知山パーキングを設定します。出力は10W、10mHの所にダイポールアンテナ相当のアンテナを立てます。

次に浜松駅前(仮)に20mHのアンテナを仮定します。実際にはこんな所にアンテナは立てません。

MATLAB で電波の伝搬損失を計算します。

伝搬損失計算をした結果、受信点までの距離は126.8km、 受信点の信号強度は-120.7dBm となり、-100dBmまでの受信が可能であるとすると、20.7dB足りないという結論になります。間にある牧之原台地の影響が大きいと思われます。
その結果、アンテナゲインが21dB以上(実際には余裕を含めて30dB程度)必要だという結論になります。これを元にアンテナを選ぶ必要があります。また、伝搬経路の選択(富士山での反射)なども検討する必要があります。下の写真は滝知山展望台の風景です。

今回のシミュレーションは初歩的なシミュレーションとなっていますが、MATLAB Antenna Toolbox は非常に高度なシミュレーションができます。今後はさらに高度なシミュレーションも紹介して行きたいと思います。